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誰も知らない異国のお菓子

「日本にはない、自分も知らない、誰も知らない異国のお菓子。でも現地では根付いている、そんなもっと新しいものを発掘したくて」。

郷土菓子職人として活動する林周作さんが、かくのごとく熱く甘い思いを胸に抱き、いざ自転車で (!) 駆けめぐった、世界の郷土菓子発掘の旅。その始まりであるフランス・アルザス地方で出会ったのが、スパイスと洋酒に漬け込んだフルーツをパン生地で固めた「ベラヴェッカ」という、クリスマスのお菓子でした。

フランス・アルザス地方のクリスマス

それは秋深まる11月。林さんがあまたの有名なお菓子屋さんの門をたたき、ようやく雇ってくれたお店で働き始め、ひと月ほど経った頃のこと。「そこはアルザス地方のミュールーズという小さな町だったんですけど、クリスマスの時期になるとあらゆるお菓子屋さんとパン屋さんにベラヴェッカが現れだして。どの店にもあって、ほんとお祭りみたいでした」

林さんも存在は知っていたものの、実際目にしたのはこの時が初めて。ひとくち食べて、すぐさまとりこに。「より海外の空気を感じるというか、異国のお菓子感が強くてそそられる。まさに僕の好きなジャンルの味でした」

ベラヴェッカって、どんなお菓子?

そもそも、ベラヴェッカってどんなもの? その定義をここで改めて。

ドライフルーツがぎゅっと
洋酒に漬け込んだフルーツ、セミドライの柔らかいタイプが多い。

洋梨は必ず入っている
アルザス名産で、ベラヴェッカの由来もアルザス語で「洋梨のパン」という意味。

パン生地で固めている
ただシュトーレンよりも生地は少なく、断面はドライフルーツがぎっしり。

スパイスも入っている
シナモン、クローブ、ナツメグなど、お菓子に使うスパイスがおも。

ただ食べ比べてみると、店によってさまざまな違いがあるという林さん。「そのへんは作り手の好みや、求めるものによって変わったりします」たとえばドライフルーツは、洋梨だけじゃなくプラム、いちぢく、アプリコット、チェリーなど。「あとナッツはくるみが入っているところもあったり。値段はいろいろなんですが、高いベラヴェッカはこのドライフルーツが全然違う。柔らかくて、ほんとにおいしいんです」

時を経て、味がじわじわ変わる理由

さらに、おいしいベラヴェッカの大切なポイントが、スパイス。「シナモンとか、バニラ、スターアニス、クローズ、ナツメグとか。単純に量もありますし、配合によっても味が変わりますね」

しかもこれが時間を経ていくたび、味が変わる決め手でもあるといいます。「変わることを前提としているので、もともとたっぷりスパイスが入っていて、最初の頃は味がとげとげしてる。この若い感じもいいのですが、時間が経つにつれてスパイスも馴染み、どんどん角がとれて、穏やかになってきます。1ヶ月後くらいが食べごろというか、個人的には好きですね」

大きなかたまりを買い求め、スライスして少しずつ。じんわり、じっくり、味わいの変化を楽しみながら、クリスマスまでの期間中、指折り数えて待ちわびる。これこそがアルザスの人たちの、ベラヴェッカのたのしみ方です。

というわけで、お菓子屋さんではひたすら作り、休みの日はいろんなお店で食べ比べる。まさにベラヴェッカづくしの日々を送った林さん。クリスマス当日、仕事が終わって帰ろうとすると、珍しくシェフに呼び止められました。
「メリークリスマス ! と言って、シャンパンにフォアグラのパテ、そしてベラヴェッカを手渡してくれたんです」家に戻り、ひとりベラヴェッカにフォアグラを乗せて食べる、至福のひととき。

忘れられないクリスマスの思い出です。

郷土菓子研究社 林周作さん

Binowa Cafe

林さんがつくるベラヴェッカを販売しています。

取り扱い店舗
Jiyugaoka, Shibuya, Shinjuku, Hibiya
*なくなり次第終了です。詳しくは店舗までお問い合わせください。