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「ちょっとずつ漬けて、バリエーションを楽しむ。もしおいしかったら、次の年はたくさんつくるんです」

料理家・中川たまさん

海と山を肌で感じられる、自然豊かな神奈川県・逗子。気持ちいい風が抜けるこの街に、料理家の中川たまさんを訪ねました。中川さんは著書『暦の手仕事』やさまざまな媒体を通して、保存食や季節の素材を使った料理の楽しみを発信しています。中川さんの食やくらしを楽しむ様子に共感し、ぜひ一度お話をうかがってみたいと思ったのが、TODAY’S SPECIALと中川さんが出会ったきっかけです。

今回は、梅酒作りを教えていただくことに。

迎えてくれた家の玄関脇には、せり出すように大きく育った梅の木が。ここまで大きな梅の木は、なかなか見かけたことがないほど。毎年、40kgほどの梅が採れるそう。梅の収穫シーズンには、家族総出で作業します。「いまでは2階の娘の部屋の窓からも収穫できるんですよ」と、中川さん。ご家族揃っての毎年恒例の作業、なんだかとっても充実感があふれて楽しそうです。

梅酒作りのポイントは、梅のていねいな下準備。

朝、庭で採れた青梅を使って梅酒を作ります。
今回使うのは、青梅1kg、氷砂糖く1kg、ホワイトリカー1.8L。

まずは梅を2~3時間水に漬けて、アク抜きを。そして、へたを竹串ですくうように取ります。この部分に雑菌が含まれているため、ていねいに。口当たりも良くなるそうです。そのあと、キッチンペーパーで水気をよく吸い取ります。特にへたの部分はしっかりと。ここで水分が残ってしまうと、腐りやすくなってしまうので注意を。ひとつひとつ指で梅を転がして、キッチンペーパーで包むように。

梅の準備が整ったら、瓶に詰めていきます。その前に、保存瓶の消毒を。アルコール度数が35度以上のお酒をキッチンペーパーに浸し、保存瓶の内側を拭きます。

梅、氷砂糖が層になるように順々に詰めていきます。甘めがお好みなら、氷砂糖を多めに。梅と氷砂糖の分量を同じにすると、甘すぎない味になるのだとか。最後にホワイトリカーを注げば、仕込みが完了です。

しばらくして瓶を眺めると、氷砂糖がゆらゆらゆっくりと溶け始めて、梅を包み込んでいます。その様子はとっても涼しげでした。

飲み頃は、まろやかな香りになってきたら。

瓶をしっかり閉めたら、3ヶ月~半年ほど光が当たらない冷暗所に置いておきましょう。飲み頃は、瓶を開けてみて、アルコール臭がなくなりまろやかな香りになったとき。

今回は青梅を使ったので、少し長めの期間を置いたほうが、しっかりと味がでます。黄色い梅を使った場合は、青梅よりもはやく出来上がるそう。コクがあり違う味わいに仕上がるので、それぞれ作ってみてもいいかもしれません。

「これがなきゃだめ、というよりもこれで代用できそうと考える」

中川さんと話をしていると、料理についてだけでなく、くらしのアイデアが自然にたくさん飛び出してきます。いつもどんな心持ちで日々を過ごしているのか。どんなことを大事にしているのか、うかがいました。

「わたしは何に対してもあまり固定観念がないので、柔軟なのかもしれません。これがなきゃだめ、というよりもこれで代用できそうって考えます。こどもを見ているとすごい発想力で、大人じゃ組み合わせつかない食べ合わせをやったりしますよね。そういうのを見てると、だんだんわたしも柔軟になってきました」

何か特別なことを無理して行うのではなく、自分の視点で楽しむ。多少の制約や不便さがあっても、そこから生まれる心地よさをうまく取り入れて、自然体で過ごしているように感じました。

「くらす空間もそうなんですけど、自分の内側も風通しをよくするというか、なるべくフラットでいたい。何かを感じ取れるような心構えは、いつも持っていたいと思っています」

そんな中川さんの日常が詰まったレシピを、2つ教えていただきました。ひとつは梅酒を使ったアレンジレシピ、もうひとつはらっきょうのレリッシュです。どちらも手軽に作れ、それでいて新鮮な味わい。難しいことではなく、大好きな素材をおいしくいただきたいという気持ちが、レシピの幅を広げていくんだと実感しました。

TODAY’S SPECIAL自由が丘では、中川さんによるワークショップも開催。中川さんがまとう「なんだか初めてお会いした気がしない」親しみを感じる空気のなかで、一緒に保存食を楽しみませんか。


お会いした方:中川たまさん
料理家。季節の素材を使った料理教室を開催するほか、雑誌などさまざまな媒体で活躍。著書に『暦の手仕事』(日本文芸社)、『一汁二菜の朝ごはん』(成美堂出版)など。
http://tama2006.exblog.jp
https://www.instagram.com/tamanakagawa

2016年5月取材