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花を飾る日常は自分と誰かを幸せにする

一年の季節を通し、日々をよりよく「今日を楽しむ」食と暮らしのアイデアや、自分らしく日々を過ごす人たちの「暮らし」を紹介しているTODAY’S SPECIAL の本、” TODAY‘S SPECIAL今日をどう楽しむ?「食と暮らしのDIY」春夏秋冬のおうち時間 “ から、フラワーコーディネーター の山本文さんのお話をご紹介します。

始まりは「花のいいところ探し」から

ステイホームで誰もが日常の大切さに気づき、まずは自分の生活を整えようと、花を買ったり飾ったりすることが身近になりました。ビギナーの方が迷いがちな、花を切る位置や花瓶との組み合わせ方も、まず「花のいいところ探し」から始めれば、とくに難しいことはありません。これは、わたしが仕事でお店に花を飾るときも、自宅に飾るときも実践していることで、ワークショップの生徒さんにも、いつも最初にお伝えしています。

たとえば、自分の部屋に飾る花を買うときは、花屋さんで「わ、きれい!」と瞬間的に惹きつけられた花を選ぶこと。家に帰ったら、その花の魅力がどこにあるのか、自分はどんなところに惹かれたのかを、じっくり見つめながら考えます。チャームポイントが引き立つ生け方をすれば、必ず素敵になる。曲がっている茎を無理にまっすぐにしようとか、花の角度を変えようとしても、うまくいきません。自分の意志を押し通すのではなく、相手のいいところを見つけて、そこをほめるように生けた方が、美しくなるんです。

おもしろいことに、花を相手にそうした練習を普段から重ねていると、人間が相手でも自然に寛容になれる。わたしは子どものころから花が好きで、中学校で華道部に入り、その後も師匠に学びながら花を生けてきましたが、花に教えてもらったことが、たくさんあります。茎のラインがきれいだと思えば長めに生ければいいし、花を上からのぞいたときの表情が好きなら短く生けてみる。水に浸かる線から下の葉っぱを落とすことは必須ですが、それ以外は正解も間違いもないのです。

花を飾る場所もヒントになります。窓辺に飾るなら、自然光が透けるような花びらや葉、花瓶も色つきのガラスが映えます。でも、花はあくまで主役ではないんです。空間を飾るものでも、絵やオブジェと比べて花の違う点は、前に人が座ってしまってもいいところ。人が気持ちよく過ごせれば、そこにある花は、もう役割を果たしているんです。

一瞬で人の心を温める力

花は、必ず「誰かのためのもの」。自分で買うなら自分のため、誰かに贈るなら、相手のため。お祝いやお見舞いは思いやる気持ちを花に託すから、花を贈られると誰もがうれしい。花にまつわるエピソードで、わたしが感激した話がありました。

カフェ「ロータス」の内装は、空間デザイナーとして活躍された故人の形見一郎ろうさんが、花を飾りやすいようにと随所にさりげない棚や凹へこみをつくってくださって、わたしはオープン当初から店内の装花を担当しています。なかでも、地下階におりた正面にある壁は、花のメインの見せ場として気を抜かないようにしているのですが、ある日、「ロータス」の評判を聞いて店を訪れてくださったマダムが、お店の客層が思ったより若く、なんとなく自分が場違いのような気持ちになってしまったらしいのです。でも、おそるおそる店の地下へおりていくと、そこに花が飾ってあり、見た瞬間「わたしはこの店に迎えられているんだわ」とホッとした、と。何も言葉を発さずとも、一瞬で人の心を温めて幸せにしてしまう花のパワーを、よく物語っている話だと思いませんか。

TODAY'S SPECIALのショップでも、花を飾る場所によって、いつも「誰か」を想像しながら生けています。たとえば食やうつわのコーナーなら、そこで繰り広げられる人とごはんの風景を。アパレルのコーナーなら、その部屋の住人像を。いずれも花は主役ではなく、空間に温度や彩りを添える役ですが、コロナ禍でお店が休業期間中のときに行ってみたら、あらためて花の必要性を強く感じました。やっぱり、花がないと寂しい。人や暮らしの気配が薄く、まるで倉庫のように感じてしまいました。カフェのトイレに向かう通路のような場所でも、そこに花があれば、人と人がすれ違う一瞬に小さなドラマが生まれます。そんなふうに、ここには絶対に花があった方がいい、と見極める感覚も、日常的に花を飾っていれば、だんだん身についてきます。

花を飾るのは自分を大切にすること

たとえばハワイのレイが「ようこそ」「ありがとう」「愛しています」といったメッセージを込めて紡がれるように、花はそもそも気持ちを伝えるツール。だから自分のために花を飾るなら、朝食のテーブルなんていいですね。朝ごはんを食べながら花を眺めて、「昨日より花が少し開いたな」「こんなに鮮やかな色が自然に出るなんて」と心が動かされることで、人は元気をもらったり、勇気づけられたりする。そんなふうに始まった一日は、やさしい気持ちになれたぶん、きっと他人にもやさしくなれるんじゃないでしょうか。

一輪の花が、そうしたやさしい気持ちの連鎖を生むのだから、フラワーパワーって本当にすごいと思います。欧米では、男性もふらりと花屋さんに立ち寄り、花束や一輪の花を買う風景をあたりまえのように見かけるのに対して、これまで日本では、花を買うことに少し身構えてしまう傾向があったと思います。でも、日々の暮らしのかけがえのなさに誰もが気づいた今、花はもう特別なものではなく、「暮らしに必要なもの」ととらえていい。花を飾ることは、自分や誰かを大切にすること、なのですから。

TODAY'S SPECIAL今日をどう楽しむ?
「食と暮らしのDIY」春夏秋冬のおうち時間 p144~p147

PROFILE

フラワーコーディネーター
山本 文さん

表参道のカフェ「ロータス」店内の挿花、TODAY'S SPECIALのディスプレイや花にまつわるワークショップを担当する。

TODAY’S SPECIAL 各店では、毎日のくらしに花を迎えるためのうつわを特集しています。
花のあるくらしをはじめませんか。

FLOWERS

2024年2月8日(木)~3月6日(水)
Jiyugaoka / Shibuya / Shinjuku / ONLINE STORE
2024年2月9日(金)~3月7日(木)
Hibiya / Ebisu /Futakotamagawa / Kyoto / Kobe
*会期最終日は17時までの開催となります。