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どんな一日も特別に感じる小豆島の朝

一年の季節を通し、日々をよりよく「今日を楽しむ」食と暮らしのアイデアや、自分らしく日々を過ごす人たちの「暮らし」を紹介しているTODAY’S SPECIAL の本、” TODAY‘S SPECIAL今日をどう楽しむ?「食と暮らしのDIY」春夏秋冬のおうち時間 “ から、小豆島で野菜を有機栽培し、民家を改修したカフェを営む三村ひかりさんのお話をご紹介します。

みんなで食卓を囲む暮らしがしたい

わたしが家族と暮らしているのは、香川県の小豆島にある、肥土山という里山の集落です。小豆島というと海のイメージがありますが、ここは島の真ん中あたり。周囲を山に囲まれているので、季節の移り変わりを感じるのも、いつも山の色からです。春は、それまで赤茶色の冬っぽい色に覆われていた山に、少しずつ緑色がまざり始め、軽やかな緑も濃い緑も、全体の彩度がだんだんと上がってくる。すると、家の縁側に差し込む光の色まで、緑を帯びたような色になってくるんです。こうした季節の変化に敏感になったのは、2012年に移住してきてからのこと。それまでは愛知県の名古屋で、わたしも夫も企業に勤め、子どもを保育園に預けながら、いつも慌ただしい日々を送っていました。

家族が一緒にごはんを食べることさえままならず、そんな生活を変えたいという思いから、夫の祖父の家が残されていたこの土地への移住を決めました。農業はまったくの未経験だったので、文字通りゼロからのスタート。これまで苦労の連続だったし、今でも課題は山積みだけれど、毎日家族みんなでごはんを食べたい、という願いはかなえられました。それはとても大きな、よい変化だと思っています。

ごはんをつくるのも、分担しながらみんなでやります。以前は、夫は料理が好きなのにその時間がなく、でも小豆島に移住してからは、つくるのは基本的に彼の役目になりました。得意な人が得意なことをするほうがスムーズで、お互いストレスもたまらないんですよね。おかげで、わたしの朝時間にも、ストレッチができるようなゆとりが生まれました。

農家って、日の出前から畑に出て、日が暮れるまで12時間くらい外で働いているイメージがありますが、わたしたちは違います。朝の始業は9 時で、農家としては大分遅い。真夏は日中が暑すぎるため、早朝に畑に出ることもありますが、それでも一旦6 時半に家に戻り、子どもと一緒に朝食を食べて、送り出してからまた畑へ。食卓で話すのは、今日の予定や帰宅時刻など他愛のないことだけど、何より大切な時間です。

好きなことを続けていける働き方

朝食は、自分たちが育てた野菜をさっと茹でたり、スープにしたり。11時ごろお茶休憩を入れ、お昼もスタッフとゆっくり食べるから、畑に出る前に朝食をいっぱい食べないと、という意識はとくにありません。もちろん売り上げの面だけ考えたら、長時間働いて、野菜をたくさんつくって売って、となるけれど、わたしたちは野菜ができるまでの過程も大切にしたい。どんなに好きな仕事でも、時間や体力や気持ちに余裕がなくなったら続けられないし、ずっと続けられる働き方をしたい、ということはいつも考えています。そう思うようになったのは、やっぱり以前の暮らしでは心が満たされなかったという背景があるからです。

わたしは都市のIT 企業に勤め、得た収入で欲しいものは買えていたし、会社の福利厚生も整っていました。けれど、働く自分と、家族を持つ自分との間に線が引かれている感じにどこか違和感があり、仕事も生活も、わたしが生きる時間としてひとつに統一したいと思うようになりました。そのころは夫も毎晩帰宅が遅く、休日出勤も多くて、一緒に過ごす時間も少なかった。だから、逆にこちらへ移住してきた当初は、しょっちゅうケンカしたんです。それでも、仕事も暮らしもひと続きの生活をしていれば、家族の気分も自然に汲くみ取れるようになるし、衝突を回避するコツもだんだんわかってくる。そう考えると、かつて理想として思い描きながらも遠くに感じていた暮らしを手に入れられたのかも、と思います。

オープンになって新しい環境を楽しむ

ここは祖父が住んでいた家とはいえ、わたしたちは夏休みやお正月に何度か訪れた程度だったので、移住するとなると不安がいっぱいでした。でも、新しい環境になれば周囲の顔ぶれも変わるのだから、まずはオープンになって、ご縁を大切にしよう、と最初に決めました。自分はこうだから、と閉じたり狭めたりしすぎると、いい話まで遠ざけてしまうかもしれない。かといって、いつも開きすぎていたら疲れてしまうから、家の一部をカフェにして、そこをパブリックスペースとして人を招き入れています。あくまでメインの仕事は農業なので、カフェの営業は週末の昼間だけですが、ご近所さんと交流ができるし、イベントやワークショップにも活用しているので、移住前からやってみたかったことが形になった場所と言えます。

外で農作業をしていると、季節の移ろいを肌で感じることはできる。でも、伝統的な行事が中止になったり、旅行も控えなくてはいけなかったりして、楽しみな予定がなくなると、一年ってこんなにも平坦な時の流れになってしまうのかというのが、自粛期間中に痛感したことです。

ただ淡々と日々が過ぎて、何もしないまま年が終わってしまう。そんな一年をもう繰り返したくなくて、毎日手帳に一言ずつ書き留めるのを新しい習慣にしました。日記というほどでもなく、マンスリー手帳の1マスに、その日あったことを短く書くだけ。それでも、何の変化もないように思えた一日が、実は誰かとちょっとでも話をしたことや、ささやかでも何かしら出来事はあったことが確認できて、心が少し落ち着くんです。一日一日、どんな日でもちゃんと特別なんだってわかると、それだけでうれしいですよね。

TODAY'S SPECIAL今日をどう楽しむ?
「食と暮らしのDIY」春夏秋冬のおうち時間 p24~p27

PROFILE

HOMEMAKERS
三村 ひかりさん

2012 年に家族で小豆島へ移住。年間100 種類以上の野菜を有機栽培し、週末は築130年の民家を改修したカフェを営む。
https://homemakers.jp/

TODAY’S SPECIAL 各店では、いつもの朝を特別にする うつわやアイテムを特集しています。

HAVING BREAKFAST

2024年3月7日(木)~4月17日(水)
Jiyugaoka / Shibuya / Shinjuku / ONLINE STORE
2024年3月8日(金)~4月18日(木)
Hibiya / Ebisu /Futakotamagawa / Kyoto / Kobe
*会期最終日は17時までの開催となります。