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台所に立つのが楽しくなる小さなコツと工夫

一年の季節を通し、日々をよりよく「今日を楽しむ」食と暮らしのアイデアや、自分らしく日々を過ごす人たちの「暮らし」を紹介しているTODAY’S SPECIAL の本、” TODAY‘S SPECIAL今日をどう楽しむ?「食と暮らしのDIY」春夏秋冬のおうち時間 “ から、季節の手仕事や保存食、野菜や果物などのレシピ本を多数出版されている中川たまさんのお話をご紹介します。

台所はそのときどきで変化する

現在の台所は、築30年の中古住宅の間取りはそのままに、システムキッチンを入れ替えて、家具や道具類は前の家から引き継いで使っています。窓は北と東向きですが、南向きのダイニングとひとつづきなので、明るいですね。以前のシステムキッチンでは取り付けてあったシンク上の吊り戸棚を、思いきって取り払ったことで、印象がずいぶんすっきりしました。わたしの身長では高い位置に収納があっても手が届きづらいので、なくしてもいいかな、と。今のところ、不便は感じていません。

逗子に暮らして約20年、今の住まいで5軒目ですが、海と山が近い土地柄、きまって悩まされるのが湿気です。うつわを表に出しているのも、棚にしまい込むとカビが生えやすいから。こうした収納法はホコリがたまりがちなので、毎回使う前にサッと洗うのが習慣になりました。温かい料理を、お湯で洗って温まった皿に盛れるし、慣れれば面倒とは感じないです。

とはいえ、子どもが小さいうちは、触って割るんじゃないかと危なっかしくて、こういうレイアウトはできませんでした。だからこれは、夫婦と成人した娘という現在の家族構成に合ったかたち。年齢や暮らし方、賃貸物件ならばその家の設備に合わせて、台所も柔軟に変化していけばいいと思っています。

色と素材をしぼるとすっきりした眺めに

愛用の台所道具は、年季の入ったものばかり。韓国がルーツのスッカラは20年ほど使っていて、豆腐やグラタンを取り分けやすく、スープを飲むときの口当たりも好き。スプーンの部分が薄くて浅いので、プリンやティラミスをすくうと断面がきれいなのも魅力です。

無水鍋は、煮込み料理や炊飯に、ほぼ毎日使います。蓋もフライパンになり、構造がシンプルなので手入れも楽。3人家族には20 cmサイズがちょうどいいと感じています。せいろは、電子レンジの代わりに使っています。ごはんをこれで温め直すと、ふっくらしておいしく、そのよさを見直しているところ。人の手の跡や、時を経た味わいに惹かれるので、家も古いほうが好きだし、うつわも、ヒビやカケなど完全ではない形のほうが愛着がわくんです。

だから骨董市やアンティークショップで出会ったうつわを、多少のキズならそのまま使ったり、ときには金継ぎで修復したり。

普段の食事は、おかずを大皿に盛ってテーブルに出し、家族それぞれが小皿に取り分けていただく形式なので、サイズのバリエーションもそれほど多くはなく、料理の仕事をしているわりには少ない、とよくいわれます。オープンな収納にしていてもさほど雑多に見えないのは、白、木、カゴ、ガラス、と色や素材感をしぼっているからかもしれません。一番多いのは白いうつわですが、お揃いのものはほとんどなく、ヨーロッパの古い品も、日本の作家さんのうつわも交ざっています。それでも自分の「好き」をものさしに選んだもの同士は、不思議なくらいちゃんと調和してくれます。

書籍や雑誌の料理撮影もここで行うため、白以外のうつわも一応は持っていますが、そういうものは戸棚の中に。部屋を見渡したとき、目に入るものは全部好きなもの、という意識でいると、自然に統一感が生まれるようです。

「気負わない」が台所を楽しくする

保存食は、幼い頃から祖母や母の作業を見ていました。娘を出産後に家にいる時間が増えたこと、また逗子に越してきて、食材で季節を感じやすい暮らしになったことで、自然にやってみたくなって。最初のころはたくさんつくって人にも配っていましたが、最近はたいてい少量つくり、短期間で家族で食べきります。量が少ないと容器も小さくていいし、種類も増やせる。常備菜の感覚で気軽につくっていると、だんだん自分好みの味につくれるようになってきます。常温保存のものは好きな形のビンに入れれば、漬け込む間も目で楽しめます。

台所そうじは、「すきま」でやる派。たとえば、お湯が沸くまでの間、鍋を煮込む間、たまたま汚れが目についたところとその周辺を、短時間でやる。それを積み重ねて、数日かけて全体をカバーする感じです。家事も仕事も、かつては一週間や数日単位でがんばって、週末はごほうびでゆっくり、というリズムでしたが、最近は一日のなかにオンオフをつくり、疲れを次の日に持ち越さないように心がけています。子どもが成長したことで、わたしの起床時間も少し遅らせ、夜の作業も早めに切り上げます。

毎日のごはんづくりも、冷蔵庫が少々心細いくらいでは買い物に行かず、庭で育てている野菜や、お米や粉を使ってなんとかできないかと知恵をしぼるようになりました。不思議と、そういう日の料理ってワクワクして、一食でき上がると達成感があるんですよ。与えられた状況で、気負わずに、疲れない範囲でやる。それが毎日楽しく台所に立つコツなのかもしれませんね。

TODAY'S SPECIAL今日をどう楽しむ?
「食と暮らしのDIY」春夏秋冬のおうち時間 p52~p55

PROFILE
料理研究家
中川たまさん

シンプルなレシピと洗練されたスタイリングが人気。季節の手仕事や保存食、野菜や果物などのレシピ本を多数出版。
https://www.instagram.com/tamanakagawa/

TODAY’S SPECIAL 各店では、日々の台所仕事を楽しくする道具を特集しています。

日々の台所

2024年5月23日(木)~7月3日(水)
Jiyugaoka / Shibuya / Shinjuku / ONLINE STORE
2024年5月24日(金)~7月4日(木)
Hibiya / Ebisu / Futakotamagawa / Kyoto / Kobe
*会期最終日は17時までの開催となります。