向山窯さんがつくるうつわ
「今日は何を食べようか」と、“作り” “食べる” ことをたのしくできるような「うつわ」をつくりたくて。
土や釉薬とのかけ合わせから生まれる心地よさとか、手に触れる風合い。手なじみのよい重さ、焼き上がりでひとつひとつ違ってくる釉薬の色やゆらぎ、それぞれの個性。機械ではだせない手仕事ならではの “ぬくもり” や 土のものが持つ “あたたかさ” は、和食でも洋食でも毎日の食卓に心地よく馴染みます。
「食べる時間のあたらしい定番になるうつわをつくりたい」そんなイメージからはじまったTODAY’S SPECIAL のうつわづくり。毎日使いたくなる手づくりのうつわを一緒につくってくれた「向山窯」さんの工房を訪ねました。
笠間焼の工房「向山窯」
笠間焼の産地である茨城県笠間市、のどかな風景が広がる小高い丘の上にある「向山窯」さん。5名の伝統工芸士を含む、10名を超える陶芸家が在籍しています。確かな技術を持った陶芸家が集まっているからこそ、一点ものはもちろん「手づくり」では困難な数の多い注文にも応え、たくさんの人に手仕事のうつわを届けることができる、笠間焼の工房です。
「たたらづくり」のプレート
工房では、それぞれのうつわに合わせて必要な道具づくりから成形まで。一つのうつわは一人の職人の手によってつくられます。
平たいお皿をつくるときには「タタラづくり」といって、粘土を薄くスライスしたものから、型をあて成形をしていきます。TODAY'S SPECIAL の「フラットプレート」や「オーバルプレート」などはこの製法。
企画の段階で「もう少し縁を広げたい」など、わたしたちの細かい要望に「この数㎜の調整は必要なのか?」と話をしながら、型からつくりなおし、理想のかたちに仕上げてくれたジェレミーさん。
粘土をこねる作業や四角くしてスライスするところ、型から成形していくところも簡単そうに見えるのは技術が高いからこそ。気温や湿度で変わる粘土の状態を見極めながら、この工程を注文に合わせて何百回と繰り返し、わたしたちの手元に届くうつわになっていきます。「練り」が上手な陶芸家が、パンを焼くとおいしい…という話も頷けます。
「轆轤(ろくろ)」を回してつくるお茶碗
「ろくろ」を回して成形していくお茶碗づくりでは、熟練した技術が必要。ろくろの上に、ひとつのお茶碗に必要な粘土の玉を置く「土取り」と言われる工程では、粘土が多過ぎては肉厚になってしまうし、少な過ぎては仕上げたい大きさにならない。そこを見極めて、ひとつひとつ同じ重さで感覚を頼りに、土を取っていきます。
下からキューっと上に向かって土が伸び、まるで手品のように土がうつわの形になっていきます。
お茶碗の内側の幅と深さを確認するための「コテ」や「トンボ」と言われる道具も、注文に合わせて全てサイズが違うので、ひとつひとつ手づくり。
TODAY'S SPECIAL のお茶碗をつくってくれた益子さん。お名前は益子さんですが、笠間焼きの陶芸家です。益子さんはひとつひとつを正確に成形し、高台になる土台の重さが均一になるように「ポンポン」とたたいて、手の感覚で厚みを調整していきます。これにも技術が必要で、下手な人がつくると高台の部分だけが重く「起き上がりこぼし」のようにバランスの悪い仕上がりになってしまう。
どの技法も工程も手の感覚が頼り。それは言葉では伝えることができないのだそう。その人のベストや道具を探してもらうしかなく、その日の気分までがうつわに現れてしまう。その為「向山窯」さんでは「一つのものは一人の職人がつくる」というスタイルで、たくさんの高い技術をもった陶芸家が、日々うつわづくりに向き合っています。
こんなにも手間と時間をかけてつくる、うつわたち。通常は困難な細かな要望や、数量の多い注文にも応えつづける作陶の原点になっているものはなんなのか。工房を案内してくださった蜂須賀さんにお聞きしました。
「1代目である社長が瀬戸で修行をして、その技術力をもって地元の茨城に戻ってきた当時、瀬戸のものはこんなにも世の中に出回っていて、益子焼きも全国へ広まっているのに、益子焼きより歴史の古い笠間焼きは、その名前さえ知られていなかった。どうしたら知ってもらえるだろうか。という想いが原点だった」。
導きだした答えは「笠間焼きをより多くの人に知ってもらうためには、たくさんつくらなければならない。たくさんつくる為には、技術がしっかりしていなければ出来ない」。
社長の増渕さんが瀬戸で修行していたとき、一日に数百から千個もの焼き物をつくってきた確かな技術力を生かして、自ら笠間焼きでは第1号の伝統工芸士となった。そして今では若い人たちに技術を伝え、あらたな伝統工芸士を輩出する側になっている。
「みなさんに使っていただきたい、笠間焼きを知ってもらいたいから」。その一心で「向山窯」さんの工房では、陶芸家たちがひとつひとつ手作業で、日々うつわをつくっています。
「今日は何を食べようか」と “作り” “食べる” ことがたのしくなるような。「食べる時間のあたらしい定番」として食卓に並ぶことを願い、「向山窯」さんと一緒につくったうつわが TODAY’S SPECIAL に並びます。
毎日の暮らしに合ううつわ。今日を豊かにするうつわを見つけませんか。